慢性疼痛について
慢性疼痛は、国際疼痛学会の定義では「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進行性の非がん性疼痛に基づく痛み」であり、一般に発症から3か月以上継続する痛みとされます。慢性疼痛には、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛、心理社会的疼痛などの様々な痛みの要因が関わりますが、心理社会的要因が強くなるほど痛みは長引く傾向にあります。このように、慢性疼痛には心理や行動面などが強く影響するため、治療は薬物治療やブロック治療などの他にも、心理療法やリハビリテーションなども行われます。また、一般に慢性疼痛の治療目標は、疼痛が全くない状態を目指すよりも、身体的・精神的な健康の向上、生活の質(Quality of Life)の向上、薬物治療の副作用を最小限にすること、疼痛の無い状態にするのは困難であるという認識を持って疼痛管理を行うこと、などが挙げられます。
脂肪由来再生(幹)細胞による慢性疼痛の治療
上記に示したとおり慢性疼痛の治療法は様々あります。しかし、いずれも対症療法が主で、根治療法がないのが現状です。そのような中、近年注目されているのが、脂肪由来再生(幹)細胞を用いた再生医療です。再生医療とは、けがや病気で本来の役割を果たせなくなった体の組織や臓器を、細胞を移植して元の働きに戻す医療のことです。
慢性疼痛の治療法として再生医療を用いる場合、患者さん自身の脂肪組織から遠心分離機を使って幹細胞を含む細胞群を分離、精製し末梢静脈内に点滴投与します。脂肪由来幹細胞は傷ついた組織を治し、痛みの原因となる炎症を抑える働きもします 。再生医療を用いた治療法では、脂肪由来幹細胞が持つ、これらの能力や働きを利用して慢性疼痛をコントロールし、症状の緩和を図ります。自分の幹細胞を用いるため、拒絶反応や感染症の心配はありません。