幹細胞培養上清液とエクソソームについて

スタッフのブログ

ごぶさたしています。再生医療室 事務担当の勇です。
北海道でも雪の少ない釧路ですが、先日降った雪が根雪になり、毎日ツルツル路面を運転して通勤するのが恐怖です。

さて、幹細胞培養上清液エクソソームは現在、臨床研究や治療に有効としてマスコミなどでも取り上げられていますので、皆さんご存知と思いますが、今回はこの二つの物質について、ご紹介します。

1.幹細胞培養上清液(Culture Supernatant):幹細胞を培養したときに生まれる上清液が幹細胞培養上清液で、様々なタンパク質(サイトカイン)やエクソソームもこの中に含まれています。含まれている成分は、成長因子、血管新生因子、酵素などで、健康に効果があるとされています。

  • 成長因子は増殖因子とも呼ばれ、細胞や組織、器官などの数、重量、体積を増やす機能を持つ物質です。具体的には、人の成長や発育を促進するホルモンや細胞や組織を増やすタンパク質が成長因子になります。
  • 血管新生とは血管を新たにつくることで、血管新生因子とは血管を新たにつくり出すことを助けるタンパク質です。
  • 酵素は、体内で起きている消化、吸収、代謝に作用する物質です。消化、吸収、代謝では化学反応が起きているのですが、酵素はそれを促進します。

2.エクソソーム(Exosomes):幹細胞上清液に含まれるエクソソームとは細胞内で作られる、直径50~150nmの小胞子の一種です。

  • DNA、RNA、タンパク質などが内包されています。
  • エクソソームは細胞外に分泌され、細胞間の情報伝達に関与し、細胞の成長、分化の促進、恒常性の維持などに関わる働きが考えられています。

現在、培養上清液やエクソソームを用いた医学的な研究や治療法の開発においても注目を集めております。これらは再生医療等安全性確保法に掲げる医療技術に含まれておりませんので、治療を始める際のハードルも比較的低いと言えます。ただ、本年10月に再生医療抗加齢学会が「幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について」というニュースを掲載し、また、日本再生医療学会からも「再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに関する提言」が出され、エクソソームの定義、効能、品質管理に基づいた安心、安全な治療応用のガイドラインは急務であり、そのために何らかの班研究あるいはワーキンググループを構築し、問題点の精査が必要ではないかと示唆されていることから、今後、何らかの規制下におかれる可能性があります。

当院でも今後、幹細胞培養上清液やエクソソームを治療に取り入れることを検討していますが、日本再生医療学会等の動きを見ながら慎重に進めていくことが肝要であると思われます。

参考:

再生医療抗加齢学会:幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について.https://aarm.jp

厚生科学審議会(再生医療等評価部会):エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001165575.pdf