慢性期の脳梗塞後遺症が改善し上肢の機能が向上した一例
患者様の情報
患者様:60 代 / 女性
治療法:脂肪由来幹細胞治療(培養)
治療までの経緯
2009年に脳梗塞を発症されました。主に左片麻痺や感覚障害、左肩の疼痛の症状がありました。回復期病院を退院後は、地元で週1回外来リハビリテーションを実施されていました。幹細胞を投与される前の状態は、歩行は自立され、左上肢を挙げることは可能でしたが、肩の疼痛と自重感により、持続的に挙げることは困難でした。また手指を同時に曲げ伸ばしする(集団屈伸運動)ことは可能でしたが指折り(分離運動)は困難でした。当院の医師から再生医療のことを聞き、治療をすることになりました。
治療内容と経過
発症後6.2年経過時点で培養した脂肪由来間葉系幹細胞を静脈投与(単回)で投与され、2週間の集中的なリハビリテーションを行いました。その結果、機能障害評価として実施したFugl-Meyer Assessment(注1)において、22ポイント(上肢19ポイント、下肢3ポイント)の機能改善が認められました。具体的には、左上肢の疼痛や自重感の軽減によって持続的に上肢を挙げることが可能になったこと、指の分離ができなかったのが可能になったこと、また歩行時に手を振ることができるようになったことによって歩く姿が良好になりました。
少し勢いをつけないと腕を挙げられず、また挙げた状態を維持するのが難しい状況でした。
スムーズに腕を挙げることができるようになり、挙げた状態で静止することもできています。
MRIのデータを使って特殊な解析を行うことで梗塞部位の周辺領域において、幹細胞投与後に新しい神経線維束が出現したことを示す画像が得られました。
【用語解説】
(注1)Fugl-Meyer Assessment…片麻痺患者の 身体機能回復を運動機能やバランス、感覚などさまざまな面からテストする機能障害の評価方法。 上肢下肢あわせて100点満点で、点数が高い方が回復傾向であることを示す。
(注2)拡散テンソル画像…MRIのデータを解析することで、一定の方向に向かって連続する神経線維を画像化したもの。