iPS細胞を用いたパーキンソン病の治験に関するNEWS

スタッフのブログ

皆さんこんにちは、培養士の山田です。
11月も半ばを過ぎ、本州では綺麗な紅葉の時期でしょうか。こちらでは広葉樹はすっかり葉を落とし、もういつ雪が降っても大丈夫!!というような様相になっています。実際は雪虫もまだ顔を出していない状態ですが、出来れば雪は遅い方がありがたいです。ただスタッドレスタイヤの減りが早いのが悔しいくらいです。

先日、京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)にてiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験の1例目の移植が実施されたとのニュースが出ていました。

この治験は今年の8月1日より開始されたもので、10月に投与が行われたと出ていました。使用された細胞はCiRAで作製された「再生医療用iPS細胞ストック」を用いてドパミン神経前駆細胞に分化させたもので、これは他家の細胞移植になります。iPS細胞からドパミン神経前駆細胞を樹立させるまで約2か月かかるそうです。
その培養した細胞を、定位脳手術(頭を器具で固定し、頭蓋骨に穴を開けて脳内に注射器のようなもので直接投与する)で患者さんの脳の線条体(被殻部分)部分に移植する手術を行ったようです。

昨年8月にはパーキンソン病霊長類モデルにおけるヒトiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の移植の有効性と安全性の確認するための試験の結果が公表されており、それによるとカニクイザルにヒトiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を脳内移植し術後のサルの行動解析によりパーキンソン病の症状が軽減されていることを観測し、移植した細胞が脳内に生着し機能していることをMRIとPETおよび脳切片の組織学的解析によって確認、さらに少なくとも移植後2年以内において脳内で腫瘍を形成しないことを確認したとありました。

今回の治療対象となるパーキンソン病とは、円滑な運動を行うのに重要な役割を担う脳の一部に異常が生じ発症する病気です。
パーキンソン病では、発症する症状を運動に関連した症状と、運動に関連しない症状の2つに分けることが出来ます。
運動症状としては、安静時振戦(手、足、あごなどのふるえ)、筋強剛(関節を動かそうとすると抵抗がある)、動作緩慢・無動(動作が遅くなり、少なくなる)、姿勢反射障害(体のバランスが悪く、転びやすくなる)などがあります。
非運動症状としては、便秘、排尿障害、睡眠障害、抑うつ、起立性貧血などがあります。
パーキンソン病では、これらの症状がすべて出現するわけではなく、症状の強さも人それぞれという特徴があります。
パーキンソン病の患者数は日本では10万人あたり100人~150人(およそ1000人に1人)がこの病気にかかると考えられており、60歳以上では10万人あたり1000人(およそ100人に1人)と、ぐっと多くなります。今後高齢化が進むにつれて、患者さんの数は増えると推定されている疾患です。

実は私の祖母がパーキンソン病でした。
祖母がパーキンソン病だと発覚したのは、祖父と二人暮らしの家の中で、朝方転んで動けなくなったことからでした。その時は骨折する程度で回復することも出来ましたが、数年後にまた転倒してしまったことがきっかけで寝たきりの生活を送ることになりました。
寝たきりになる前、普段は手の震えがみられ動作はゆっくりしか動けませんでしたが意思疎通などは普通にできていました。どこかに一緒に出掛ける場合は、腕を組んで祖母を支えることで、会話をしながらゆっくり歩くことができていました。祖母としては排尿障害で夜トイレに行きたくなっても一人では行けず、70代になった祖父に介助を頼まなければいけなかったりするのをとても申し訳なさそうにしていたことが印象に残っています。
寝たきりになった後も痛みを感じることが多く、私にはお見舞いに行った時にその部分をさすってあげることぐらいしかできませんでした。私自身の経験からも、早くパーキンソン病が治る病気になってくれたらいいなと思います。

まだ私が中学生だった15年ほど前には、難病であり治らないとされていた病気が、治験を行えるまでになっているというのは、本当にすごいスピードで医療が発展していると感じますし、その研究に尽力されている方々のおかげだと思います。
幸い、再生医療は法改正のおかげで医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)になってから、きちんと安全性が確保された場合は以前よりも承認までの期間が格段に速くなりました。それだけ日本の産業として再生医療が期待されているということでもあると思います。
1日でも早く皆様が治療を受けられるようになることを願っています。