みなさんこんにちは。培養士の杉本です。
最近では再生医療等製品の承認やiPS細胞を用いた臨床研究の話題がニュース等で見る機会が多かったように思います。
再生医療等製品の承認については、脊髄損傷治療の「ステミラック注」、白血病などの癌治療の「キムリア」、重症下肢虚血治療の「コラテジェン」といったものが新しく承認されています。脊髄損傷治療の「ステミラック注」については骨髄由来間葉系幹細胞を用いており、当院で実施している脂肪由来間葉系幹細胞を用いた治療と、幹細胞を用いるという点で少し類似点があるかと思います。一方で、「キムリア」、「コラテジェン」というのは幹細胞を用いた治療ではなく、遺伝子改変を施した細胞や遺伝子そのものを用いる治療です。
「コラテジェン」については重症虚血肢に対して、新しい血管が作られるように働く遺伝子を患部へ注射し、血流を再建しようという治療です。臨床試験では7割程度の患者さんで症状が改善したとのことです。「キムリア」はがん細胞に対して攻撃するための能力を遺伝子改変により高めたT細胞が用いられる製品です。
また、iPS細胞においては脊髄損傷の治療に関する臨床研究の計画が厚生労働省の了承を得ました。こちらはバンクにある他人の細胞から作られたiPS細胞を用いて、神経前駆細胞を作製し損傷部に注射により移植するというものです。
いずれの治療方法も“遺伝子”を用いており、さらにiPS細胞を用いる治療に関しては他人の細胞由来なので再生医療の分類としては第1種になります。分類については以前に書いたことがありますが1)、最も注意を必要とする再生医療等技術となり、3月4日現在において第1種は研究では数件の計画が提出されていますが、治療としては0件です。再生医療の製品が順調に増えていったとしても、どの医療機関でも受けられるというわけではなく、治療計画を厚生労働省へ提出する必要があります。実用や普及にはもう少し時間が必要かもしれません。