脊髄損傷に対する再生医療のトピックス2件

スタッフのブログ

皆さん、こんにちは。培養士の梅田です。

2018年も残りわずかとなりました。12月に入って本格的な冬を迎え、とても寒くなってきました。寒くなると体調を崩しやすくなりますので、健康に気を付けて年末年始を楽しく過ごしましょう。

 

最近の再生医療のニュースを見ていると脊髄損傷の治療や研究が大きく進んできているように感じます。
先月のことですが、世界で初の脊髄損傷治療薬の販売が承認されたとのニュースがありました。これはニプロと札幌医大が共同開発した「ステミラック注」と呼ばれる再生医療等製品であり、この製品は患者自身の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を培養し、静脈に投与することによって、幹細胞が脊髄の損傷部に集まり、炎症を抑え、神経の再生を促す治療のために使われるというものです。
この製品を使用した治験は平成25年12月から札幌医大で実施され、脊髄を損傷してから3~8週間以内に投与した13例中、12例で身体の感覚が戻ったり、手足が動いたりするなどの効果が得られたそうです。ただこの製品は条件付きでの承認のため、今後7年の全患者を対象にした安全性や有効性などの評価を経た上で、正式な承認となるようです1)

また慶應義塾大学がiPS細胞を使用して脊髄損傷の治療を目指す臨床研究計画を承認したとの発表がありました。審議を経て正式に認められれば、iPS細胞から作った神経細胞のもとになる細胞を脊髄損傷患者に移植して、機能改善につなげる世界初の臨床研究が早くて2019年夏に始まる見込みだそうです。
計画では、損傷後2~4週間の患者に神経のもとになる細胞の移植を行います。但しiPS細胞から作った神経のもとになる細胞は腫瘍化するおそれがあるため、安全性を優先し、患者に移植する細胞数は最小限の200万個にし、1年かけて安全性と効果を確認します。将来的には移植する細胞を増やしたり、慢性期の患者を対象にしたりすることを目指しているとのことです2)

上記2つの脊髄損傷に関するニュースはどちらも亜急性期の患者を対象としています。また大阪大学では慢性期の脊髄損傷の患者を対象とした臨床研究が行われており、急性期と慢性期の両方の脊髄損傷に関する研究が現在行われています。また脊髄損傷以外にも再生医療に関する研究は行われているので、定期的にブログでお伝えできればと考えています。

参照
1):https://www.asahi.com/articles/ASLCQ2DVLLCQUBQU004.html
2):https://www.asahi.com/articles/ASLCX3G0FLCXULBJ003.html